2026/1/15

執行官事件についての考察

自分も国税の職場において同じような職務経験をしたため、今回の事件について考察してみたいと存じます。裁判所執行官と国税徴収官の一番大きな違いは、回収できない場合の被害者はだれかということです。裁判所執行官が回収できない場合の被害者は、裁判に勝訴した債権者です。執行できない場合、特にその債権者が個人の場合、債権者の生活が困窮化する場合も十分想定されますのでどうしても執行は厳しいものとなります。それに比較して国税債権が回収できない場合の被害者は一般納税者全員となります。そのため、納税者一人当たりの被害額は薄くなりますので回収不可により生活困窮者がでるとは考えられません。また、国税滞納処分の前提として滞納者の生活を困窮化させる処分は法律上禁止されていますので、結果、滞納者の実情を考慮した処分に落ち着くことになります。ただ、それらを第一段階として判断するのは、滞納者本人と面接し話を直接聴く担当職員となりますので、金銭や資産があるにもかかわらず自主納付しないなどの内容によっては、厳しい処分執行を宣言せざるを得ない場面も多々ありますので、相手方が興奮状態となることはよくあります。多くの場合滞納者の住所や会社本店事務所に職員一人で直接臨場して相談するため、守秘義務があるため具体的内容は公表できませんが、経験上、滞納者自宅で日本刀を抜かれたことや、玄関戸を施錠され自主的に帰ることができなくなったこともあります。数十年前の世間的にまだおおらかさの残る時代の話です。今の時代ならば、公務執行妨害罪等のなんらかの事件扱いとなることでしょう。また、組関係の事務所にも何度か行きました。営業種目上は花店経営となっていましたが、本店事務所に伺って代表者に話を聴いたところ店舗は持たずスナック、バーなどの酒を提供する夜間営業店に花を売る形態をとるが事実上はみかじめ料回収の広域暴力団系4次団体の組長が経営する会社でした。代表者は組長の奥様で玄関先で金ラメ入りのロングドレスを着た方を初めて見た時は花屋でこんな服装を着ているのかと不思議に思ったのですが、代紋入り提灯や組員名の木札がかかっている事務所内に通されて納得しました。隠したりせずここは組関係の事務所であることや事業内容も教えてくれました。他のその筋の方にも何度か接触したことがありますが、今はどうか分かりませんが暴対法施行前の共通点は身分を隠したりせず、堂々と当方はヤクザであるとはっきりと名乗っており、普通に会話が成立する方ばかりでした。組織防衛上、国税等の国家権力に対しては意味もなく強圧的態度をとってもいいことは何もないと考えてのことかも知れませんが。以前アメリカのドキュメンタリーを見た記憶では、アメリカでは州によっては、司法警察ではなく、執行警察が拳銃等で武装し日本の執行官の仕事をしていました。日本においては執行官や国税職員も警察官の立ち合いを依頼できる場合があるとなっていますが、現実は、相手と会ってから依頼の必要性を判断するため、初めて会った時にこのようになると防ぎようがないのが実情です。国税職員は職員の人員構成上原則一人で行くことが基本のため、このような事件はいつあってもおかしくないと考えていましたが、対岸の火事とすることなく、職員の安全面を組織的に考え直す事件であると考えます。